【オーケストラ・デモスとの出会い】
6月にパリに学会出張しました。到着日に荷物を持ったまま、市内北部のシテ・ドゥ・ラ・ミュジーク内にある音楽博物館へ。半日ではとても全部を見ることができず、帰国日の24日に再訪しました。

 シテに着いたら、そろいのTシャツを着て楽器を持った大勢の子供たちがいて、にぎやかです。どうやら何かイベントがあるようです。受付で聞いてみたら、オーケストラ・デモスの定演でした。博物館は今度にして、そちらに行くことにしました。

 オーケストラ・デモスは、7~12歳の子供たちを対象にした、パリ・フィルハーモニーの音楽教育プログラムです。公式パンフによると、2010年創設で、対象者の居住地域には一定の基準があり、それは僻地と荒れる郊外のようです。フランス本土と海外領土のあちこちに、たくさんのオーケストラ・デモスがあります。そのうちの8つが、1年間の練習成果を披露する日に、私はたまたま居合わせたのでした。もちろん、この取り組みをこれまで全く知りませんでした。

 幸運なことに、パリ・フィルハーモニーの大ホールに無料で入り、子供たちの精一杯の演奏を聴くことができました。もちろん技術面ではいろいろあるのですが、指導者や助演者のプロに助けられて、しっかり音楽を作っていました。こういうのには弱くて涙が出ます🥲

 客席は親たちで満席。入場の瞬間から大歓声が上がります。クラシックのコンサートに来たことのない親もいるのでしょう。オーケストラ体験の機会が、子供たちに直接届くことの大事さが、よくわかりました。

 当日の動画と演目は、こちらのサイトから見ることができます。14時の公演が私が聴いたものです(1団体30分×2公演)。16時と20時にも、それぞれ3公演があったようです。https://philharmoniedeparis.fr/.../con.../1155505-demos-2023

 調べたら、オーケストラ・デモスは「オーケストラ・クラス」という映画にもなっていました。これも今まで知りませんでした。https://ciatr.jp/topics/310893

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 私自身は、父のお古の楽器で8歳からクラシックギターを始めました。きっかけこそ作ってもらったものの、親の影響でというよりは、高校そして母校一橋大学のギター部の指導者・部員と関わる中で、音楽の嗜好を確立していきました。ギターは今でも続けています。

 17歳の息子は、高校の校外授業で聴いたオペラ公演に魅了され、音大の声楽科を目指しています。コール・メルクール(一橋大学のグリークラブ)出身でオペラ好きの夫や、私の影響も少しはあったのかもしれませんが、直接のきっかけはやはり学校です。

 いずれも、公教育の中の(課外活動を含む)音楽教育が、日本でも有効に機能している例だと思います。(N)