【初めまして!新メンバーです。】

《自己紹介》

 初めまして。Dです。社会人学生であり、1歳の子の母です。現在、言語社会研究科修士2年で、美術の研究をしています。

幼い子供を育てながら、細々とでも研究を続けていく上で、どのような道があるのか、情報を求めている方々に私の実体験をシェアしたいという想いで書きます。

 まず、一橋と私の歴史は:

2023年4月、入学。長期履修制度(2年で修了のところ、4年まで在学期間を延ばせる制度)に申し込む。(妊娠5ヶ月)

2023年8月、出産、半年休学。(子供0歳)

2024年4月、復学〜今に至る。(子供0〜1歳)

 一橋大学の「ダイバーシティ推進室」には、入学前から現在に至るまで、大変お世話になりました。妊娠中、大学に来る度に、静かな部屋で横にならせていただいたり、産後の不安を聞いてもらったり。育児しながら研究を続けてらっしゃる先輩方とお会いできたのも、推進室を通してでした。ベビーシッター利用の助成金も、こちらの課を通して申請しています。現在の相場だと、私の場合はあっという間に年間助成額の上限に達してしまうので、上限額を上げる・解放してもらえれば、経済的・精神的負担がまったく違うだろうとは思っています。

 また、先生方にも配慮をいただきました。出産直前までつわりがひどく、座っていても脳貧血を起こし、妊娠後期は大学に通うこともままなりませんでした。情けないやら悔しいやらで泣きながら床に突っ伏して課題をこなしていましたが、オンラインでの講義参加、試験代替の課題提出などを先生方にお願いしたところご協力を賜ることができ、無事に単位を取得できました。

 現在にいたるまで、オンラインで参加させていただけるかどうかは、私が個人的に先生方にご相談して、考慮いただいている状態ですが、受講に関するインフラ整備は大学運営側に整えてほしいと思っています。学生がアカデミアに携わるために、アカデミア以外のところで多くの時間と労力を割かなければならない/先生方がzoomの設定などを工夫しなければならないという現状を改善してほしくて、ダイバーシティ推進室に相談しました。オンライン講義の一般化は、先生方の方針や授業の性質にもよるので、大学全体での受容は難しいかもしれませんが、教務側から先生方へ「オンライン対応機材の貸出および事前セッティング可能です」などの働きかけはしてもらえるのではないかと期待しています。大学内で話が進めば、妊娠出産子育て以外でも、健康上の理由等で大学に足を運び辛い学生も、肩身の狭い想いをせずに受講できるようになるでしょう。

 この大学が好きだ、と思う理由のひとつが、先生方や周りの学生さんたちの優しさと理解です。「自分の身体と家族との時間を大切に」「無理をしないことも大事」など、周りの方々からいただいた励ましの言葉はお守りのようで、それは今子育てしている最中も変わりません。

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《学業と子育てのバランス》

 大学から離れた場所に住んでいることもあり、せっかく進学したのに直接大学に行って他の学生さんと話ができないこと、常に時間と体力の制約があること、20代の人たちと同じ速度と密度で研究に取り組めないことは、とてもストレスでした。しかし2年経った今、友人もできて、少しずつ大学にも自分の居場所が出来つつあります。 

 保育園とベビーシッターさんにフルに頼りながら、それでも全く足りない人手と自分の体力と時間に嘆きながら、日々の生活を回しています。これを書いている今、娘はお昼寝しており、一日の中で唯一、緊張が緩む時間です。

 学業・研究と、家事育児の間で心は常に揺れ動き、どちらが自分をより満たすかなど比べるまでもなく、どちらも大事なのですが、子の成長は著しく、昨日今日と毎日できることが増えていくので、1秒たりとも目を離したくないというのが本音です。  少し前に、マティスの切り紙絵を見て、「てって!(=手)」、「ぱ!(=葉っぱ)」と認識したのは大きな驚きと喜びでした。植物や海藻や手を模した切り紙絵が、キャンバス上で置かれる場所によって異なる意味合いを持つことを、本能で理解しているのかもしれません。ピカソのセラミック作品に描かれた鳥を指して「ぽっぽ!」と喜ぶ姿は愛らしく、岡本太郎の彫刻を見て「わんわん!」と教えてくれたり(犬…ではない…けれど、たしかに四足歩行で耳がある生き物の像)、アレック・ソスの写真でモデルが横たわっているのを見て「ねんね!」と描写します。アートは、作品の表象をどれだけ読み取れるか、ということが大事な側面もありますが、それに縛られることのない、幼児の率直な感想に胸を打たれることが多い日々です。

 美術館の教育普及や、パブリックを受け入れる体制について、切実に考える機会が増えたので、またそのうち綴っていきたいと思います。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

(言社M2・D)